TACL イノベーション・メンター(Iメンター)の最前線セミナー
イノベーション・メンター (Iメンター) の最前線セミナー 報告
開催名 :イノベーション・メンター (Iメンター) の最前線
開催日時:2015年11月12日 (土) 13:15~17:00
共催 :リーダーシップ・アカデミーTACL (株式会社トランスエージェント)
プライスウォーターハウスクーパース株式会社
はじめに、TACL代表 ピーター D. ピーダーセンから、今回のセミナー開催の背景について説明がなされた。アンカリング、自己変革力、社会性の3つの観点からトリプルA経営を提唱する中で、日本企業は自己変革力、とりわけ創造性・革新力の自己評価が低い。Iメンターは、イノベーション経営の切り札になりえるのではないかという仮説のもと、今回の国際セミナー開催の運びとなった。
基調講演:
「ワ―ルプールのイノベーションストーリー:腰の重いメーカーから、全社員がイノベーターになれる企業への脱皮の旅」 ナンシー・テナント博士
1999年、買い替えでしか白物家電は置き換えられないような時代だった。当時のCEOから、これではだめだ、みんながイノベーションを興せるように会社を作り変えようというオーダーが下った。それぞれのビジネスで、イノベーターが動けるためのファンドを作り、一線級の人材をチームに入れてもらえるようにした。ワ―ルプールでは、イノベーションの定義をすることが最初のステップで非常に重要だった。
テナント博士は17年間、チーフイノベーションオフィサーとして仕事をしてきた。ウイットカムCEOは、イノベーションをエンゲージメントの仕組みとして活用し、社員も変わったが、自身も変わった。2004年に後任のジェフCEOが後を引き継ぎ、プログラムは継承されていった。当初イノベーションを根付かせるには7年かかった。リーマンショックでは、ワ―ルプールも打撃を受けたが、当時イノベーションのパイプラインがあったため、その資産活用を通して、乗り切ることができた。過去1,200名のIメンターを育成してきている。
ノートルダム大学 ポール・ヴェラスコ氏から、iVia, CIMpに関して講演が行われた。イノベーションはプロセスである。人に伝え、教えることができる。立ち上げて3年だが、様々な企業で通用することがわかった。
次いでモイセス・ノレーニャ氏から、Iメンター養成のプロセス、枠組みに関して講演が行われた。イノベーションはトップダウンも大事だが、現場の最前線からの提言も大事である。イノベーションの3段階;基礎の確立、プロセス、管理に関して、解説が行われた。
アイディア出しは、イノベーションの一部にすぎない。それぞれのプロセスで何にフォーカスし、何をインプットし、どんな活動を行い、何をアウトプットするかが縦軸の一連の流れになる、どんな箱が必要なのかを考えること。アウトプットは、「発見」として事例が得られる。
次が、アイディアを生み出すフェーズとなる。本当の価値を生み出すには、次のフェーズに移らないといけない。「肉付け」のフェーズ。何度も繰り返して、最後にLaunchのフェーズに移行する。Iメンターは、全体のプロセスの中で、チームの感情的な起伏をコントロールするのが、ひとつの大事な役割となる。
【Q&A】
1.Iメンターは最初の段階で、参加者は準備ができていたのかどうか?
最初は、トップマネジメントのコミットが要り、その前提で、Iメンターが参加者の悩みを共有して、チームに入りこんでいく。
2.イノベーション以外に、例えば品質とかコストなど異なる要因があると思うが、それらとぶつかることはないのか?
イノベーションもコストも両方大事であり、コストを削減した方が、クリエイティブになる。それぞれのイニシャチブがばらばらではなく、統合化されて使われることが重要である。問題があったら、それを分解していくのが通常のやり方だが、そうではなく、むしろ全体を統合化していくことが大事。
3.イノベーションを行う時に、受講者が殆ど素人の場合はどういうやり方が適切か?
ファシリテーターの役割、かつリーダーの役割の両方が必要。Iメンターはどんな時でも適切なチームを作ることができる。必ずしも専門家でなくても、そのような能力を段階的に作ることはできる。
参加型エクササイズ:コーチ:モイセス・ノレーニャ氏
「思考の枠を打破する方法論」
アップル、イケアやデル、任天堂など、枠を打破した事例の紹介。固定観念が我々の考えを狭めている。もし自分の会社が他社に買収されたら、何が起きるのか、全く無関係な産業の方が、斬新な思ってもみない提案が出ることがある。トレンドは私たちに想像だにしない将来図を見せてくれる。メガトレンドもひとつのレンズになる。消費者のまだ満たされていないニーズも、重要なレンズである。イノベーションによって成長の機会を作ることができる。
【ディスカッション】
日本におけるIメンターの可能性は?
野口氏:
イノベーションを興すプラットフォームを作ることが重要ではないか。天才を一人、二人作るのではなく、底上げをするための踏み台を作る。
ノレーニャ氏:
企業自体を革新的にするというメカニズムが重要。
ヴェラスコ氏:
プログラムに入るためには管理職からのサポートが大事。日本やアジアでは、5日間のプログラムを提供したいと考えている。日本の市場に通用するものにしたい。パイロットプログラムを来年日本で走らせたいと考える。
テナント氏:
5日間で、5つの分野で堅牢なツールを身につけることができる。ワ―ルプールでは最初に始めた時に世界各国の各地域にパートナーを作った。そうしたパートナーがいなければ、成功は難しかったと考える。
野口氏:
Iメンターのような仕組みは日本に合っているのではないかと考える。Iメンターを日本向けにカスタマイズすれば、導入に向いているのでは。
ピーダーセン:
ドラッカーの言う人を活かす組織になってほしいと考える。そのためにIメンターは日本でも有用なツールになり得るのではないか。
以上
左からピーダーセン、ヴェラスコ氏、テナント博士、ノレーニャ氏、安藤
- 2015年12月4日
- カテゴリー: 開催報告-MIS